こども食堂店主のひとりごと:こども施設の理想と現実

店主のひとりごと

おはようございます。

 

こども食堂【虎吉】店主・高木のひとりごとです。

 

今回のテーマは『児童養護施設の理想と現実』です。

 

こども食堂を運営している身からすると看過することのできない問題だなーと思い、いろいろ考えさせられた次第です。

 

ある日。

児童養護施設で働く男性Mさんが飲みに来られました。

 

ヘタしたら息子ぐらい年下なのでMくんにしときます。

 

Mくんはまだ働き始めて半年。

ひよっこのルーキーです。

 

彼には熱い想いがあります。

こどもたちが輝く未来へ羽ばたけるようにお世話したいと。

 

なんとも素晴らしいじゃないですか。

我が虎吉の理念と共通するところがたくさんあって、妙にウマが合います。

 

ところが、彼のそんな熱い想いとは裏腹に、上司がとんでもない人間で、悩みがつきないというのです。

 

その上司の人は60代女性のTさん(仮)。

長年その仕事に携わっていて、現在施設長の次に偉い人なんですってよ。

いわばNO.2ですね。

 

その施設では11時には完全就寝というルールがあるんだそうで、ある日たまたま11時を過ぎても一部のこどもが起きてその辺をウロチョロしてたんだとか。

 

ルールを守れなかったのはMくんの責任だとかいってTさんに1時間ほど説教をくらったそうです。

 

Tさんは、ルールは絶対に守らないとダメ!っていう人だそうで、自由にのびのび育てたいMくんとは反りが合わないところがたくさんあって、精神的にかなりストレスがたまっておりました。

 

僕の個人的な感想は、こどもは毎日吸収することがたくさんあって、ルール通りにいかないことなんかしょっちゅうあるものだと思うので、Mくんの考え方に大賛成です。

 

僕自身も多少は子育て経験がありますが、ホントに自分が考えるようにはいかないことがたくさんあります。

 

行ったらダメって言ってるのに平気で行きやがるし、片付けてって言ってもそのまま放ったらかしにしてるし、急いでる時に限ってジュースこぼしたりするし。。。泣

ルールなんか決めたところでそんなもん守るような動物じゃない。

まーでも一般家庭と施設とではそもそも形態が全然別モノだから比べれるようなものではないかもしれないけれども。

 

逆にね。

そういう施設で生活してるこどもは親がいないので、精神的に不安定になりがちなんです。

職員が親代わりと言っても、こどもの人数分職員がいるわけでもない。

どうしてもひとりひとりにかける時間は限られてしまうので、普通の家庭で育ってるこどもよりも愛情が不足してしまいます。

 

そんな状態ならむしろこどもたちはのびのび育てるべきなのではないかと思うのです。

 

もちろん、のびのびさせることによる弊害はたくさんあります。

社会に出たら厳しいルールばっかりです。

ルールもそうですが、弱肉強食の競争社会です。

その中で生きていかなきゃならない。

 

のびのびさせてしまったらその厳しいルールや競争社会に揉まれて人間が壊れてしまう。

そうならないように、小さい時からそういうことを教えておかなきゃならない。

 

それはよくわかります。

 

でも。

 

そこじゃなくね?

話を聞いてると、ルールは守れ、でも後のことは何も知らねえよ、と言っているようにも聞こえます。確実にこどもたちには愛情が足りていません。

 

ルールを守れということは叱らなくちゃいけない場面もたくさん出てくる。

愛情が足りてない人間は叱られるとメチャクチャへこみます。

それこそ自殺してしまうんじゃないかってぐらい落ち込みます。

しかもまだ幼くて精神的にも非常に未成熟なのに。

ルールを守れというなら、その後のフォローもしっかりして安心させてあげないと、どんどん精神的に孤立していってしまいます。

まともに人間形成ができるわけがない。

そんな状態で厳しいルールの社会に出たところで、まともに生きていけるわけがない。

 

遅かれ早かれ人間が壊れてしまうのは火を見るより明らかです。

 

それならせめて人間形成だけはまともにやるべき。

彼らに必要なのは愛情を持って接することで、人間ってこんなに温かいものなんだ、ってことを身をもって知ること。

そもそも何らかの理由で親と離れてるんだから。

 

それができれば、厳しいルールの社会に出て壁にぶち当たった時に、戻ってくるはず。

戻って育ててもらった人に触れることで英気を養ってまた頑張ろうって思えるはず。

 

施設を出たらもう関係ない人間だと言わんばかりの対応のしかたです。

 

そうじゃないだろう。

普通の家なら壁にぶち当たった時に実家に帰って家族に相談したりするはずです。

施設のこどもたちにとってそこは実家です。

職員は家族です。

 

いつでも帰って来たらいいはず。

 

でもMくんの施設では、戻ってくるこどもはほとんどいないそう。

愛情をもって接していないことのあらわれです。

よくよく話を聞いてみると、Tさんは自身が子育てを経験したことがないとのこと。

 

そりゃーわからんよね。

いや、そんなことは大した問題じゃない。

 

子育て経験があろうがなかろうが、生きていくことを真剣に考えればもっとこどもたちと向き合うことはいくらでもできる。

Mくんがいい例だ。

 

Mくんには子育て経験がない。

けど彼は真剣にこどもたちと向き合おうとして一生懸命考えている。

 

彼は虎吉に来るのは2回目です。

初めて来た時にもTさんと考え方が合わないと言って悩んでいて、そのことを打ち明けてくれましたが、その時はまだTさんと腹割って話をすればなんとかなるんじゃないかと思っていました。

 

でも今回さらに詳しく話を聞いてみたらTさんと話をしてなんとかなるレベルじゃないな、と。

 

話をしたところで彼女が何か変わるものじゃない。

仕事一筋で長年やってきたプライドもあるだろうし、子育てはおろか結婚もしたことがない。

おそらく人とのコミュニケーションがあまりお上手ではないご様子。

経験上、そんな人間はよっぽどの事がない限り変わらない。

 

環境が人を変えてくれることもあるけれど、彼女は組織のNo.2。彼女よりも上の立場の人間に期待したいところだけど、その立場にあるのは施設長のみ。

施設長は施設長で、彼女と同じような考えを持っているので、いわば彼女にとってはぬるま湯状態。

 

仕事を辞めるまでその考えは変わることはない。

 

Mくんが考え方を変えるしか方法がありません。

 

聞けば、彼はこの施設でずっとやっていくつもりはないということでした。

 

それならもう自分の想いを全部ぶつけてみたらどう?という提案をしてみました。

クビになってもいいって覚悟で。

このままTさんの言いなりになって腐っていくよりかはそっちの方が気持ちよく生きれるんじゃない?と。

 

それを実現するためにはまず、こどもたちを味方につけてはどうか、という提案をしてみました。

 

Tさんを共通の敵に仕立て上げて、こどもたちとの信頼関係をより強固なものにすることで、精神的な負担を減らすためです。

 

ひとりで立ち向かうよりも味方が多い方がいい。

 

とは言ってみたものの、この作戦はいずれ去ることを考えるとこどもたちが寂しい思いをしてしまうというリスクが伴います。

 

味方につけようと思ったら、こどもたちと仲良くならないといけません。

仲良くなるためには、職員として接するのではなく友達として、同じ目線に立って接しないといけません。

 

そうなるとこどもたちからするとお兄ちゃんみたいな存在になります。

 

そんな人が去っていくのはとても寂しいもの。

それは傍から見たらとてつもない裏切り行為にみえます。

中には裏切られたと思ってしまうこどももいるかもしれません。

 

そんなわけで、提案してみたものの、途中でそこに気づいてからその作戦は曖昧になってしまいました。

 

こどもたちに罪はないのです。

 

てゆーか。

 

そもそも新人にそんなこと悩ませるなよ。

 

理想を持って仕事するのは立派なことやん。

 

こどもたちがなかなか言うこと聞いてくれない!とかで悩むならまだしも。

 

自分なりの信念と理想をしっかり持って頑張ろうとしてる若者をなぜそうやって無碍に扱う?

 

ウチで働いてもらいたいぐらいの熱い心を持っておられる。

 

昭和、平成と約100年の歴史の中で劇的な変化を遂げて最終的にたどり着いた、令和現代に、まだそんな昭和の呪いのような考え方をしてるアホな人間がいるのかと思うとウンザリしますが、これは他でもない、現実に起こっていることです。

 

そしてこういう施設が他にもたくさんあるのかもしれない。Mくんのように苦しめられている人が泣く泣く職場を辞めていく、なんてことがたくさんあるのかもしれない。

 

今回はMくんという人とたまたまお近付きになれたことで氷山の一角が垣間見れたような気がします。

 

どこの企業とか組織でもそういうことはあるとは思いますが、こどもが関わる仕事でこういうことがあるとこどもたちの未来に大きく影響を与えてしまうなー、と兜の緒を締めたできごとでした。

 

ご清聴ありがとうございました。

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