おはようございます。
こども食堂【虎吉】店主・高木のひとりごとです。
本日のテーマは『人間としての価値』。
人間の価値なんて人によって捉え方が変わるから一概に言えるものじゃない。
でもだからこそ自分の中でこれ!っていう価値観があった方が生きるのが楽しくなる。
そんなことを考えてみたら、目に見えない、形のないところに価値を感じてるなーと思った次第でござる。
突然の飲み
先日、ひとりのおじいちゃんのお客さん「Tさん」に唐突に「飲みに行こう!」って言われた。
それを僕はまた今度〜っていうことなのかと思った。そういうのはよくある話なので、今回もそういう感じなのかなーと。
ところがどっこい。
「じゃあのれん片付けてタクシー呼んで」と。
……え……???笑笑
まさかの今???笑
まだ14時だぜ?笑
Tさんは最近頻繁に来てくれていて、わりとよくしゃべるようになっていた。
でもまさかいきなり飲みに行こうって誘われるとは思ってなかったから戸惑いを隠せなかった。
お店まではタクシーで10分ぐらい。
その道中で運転手さんも巻き込んで談笑してる時に、Tさんが「Yくんも一緒に行きたかったなー」と言った。
Yくんは虎吉がオープンした当初からずっと来てくれてる常連さん。
たまたまYくんとTさんが一緒になった時があって、はじめましてなのに妙にウマが合って、お互いに瓶ビールを入れあったりして、すごく盛り上がってた。
その時にもTさんがYさんに「今度一緒に飲みに行こう!」って誘ってて、はたからみててもなんかいい雰囲気だった。
後で連絡してみる旨を伝えた後、さらにTさんが続けて言った。
「おれは人をみるねん。つきあった時間とか関係ないねん」
と。
確かにそうだ。
人と人は波長が合えば時間なんか関係ない。
まるで今までずっとつきあいがあったかのような錯覚を覚えることがある。
そしてみる人はちゃんとみてくれてる。
Tさんはいつも出だしは瓶ビールしか飲まない。
でもその日たまたま瓶ビールがなくてあわてて近くのスーパーに買いに走った。
バレないようにこっそり買いに行ったつもりだったけど、しっかりバレてた。笑
でもそれを怒ることなく、むしろ「わざわざごめんね」と気遣ってくれた。
しかも近くのスーパーには冷えた瓶ビールは売ってないので生ぬるいまま出さざるを得なかった。
それでもTさんはそれを咎めることなく、「氷ある?」と、氷を入れてでも飲んでくれた。
Tさんからしたら自分のためにわざわざそこまでしてくれたことが嬉しかったみたい。
瓶ビールは4本買ってきてすぐさま濡れたタオルでくるんで冷凍庫に入れた。
最後の4本目はさすがによく冷えてたから「これよこれ!」と言って喜んで飲んでた。
違うのよ。
それが当たり前なのよ。笑
居酒屋としてあってはならないこと。
怒られても何も文句は言えない。
でもそうやって気遣ってくれたり、当たり前のことで喜んでくれたりしたことが僕にとってはすごく嬉しかった。
なんてステキな人なんだろう、と。
僕の推測だけど、TさんもTさんでいろいろ嬉しくなって「飲みに行こう!」って言ってくれたのかなーと思った。
この日の出来事だけじゃなくて、それまでの虎吉というお店での振る舞いとかいろんなことをみてくれてて、それがたまたまこの日に爆発したのかな、と。
連れていってもらったのはTさん行きつけのカラオケスナック。
Tさんにとっては自分の庭のようなもの。
逆の立場で考えた時、そういう場所に人を連れていく時って、気に入った人しか連れていかない。
Tさんにそこまで気に入ってもらえたんだなー、と。
他のお客さんにも「飲みに行こう!」って誘いを受けることはけっこうあるけど、お店があるのでなかなか行けない。
夜、お店が終わるタイミングとかだったら問題なく行けるけど、この時まだお昼の14時。
でもこの時ばっかりはいろんな想いがあふれて勢いもあって「行こう!」って思った。
そう思わせてくれた。
お店についたら、親と同じぐらいであろう歳のママさんが出迎えてくれた。
すごく陽気で懐の深そうな人だ。
客席にはこれまた親と同じぐらいのおじさまと、かなり高齢のおばあちゃまが座ってらした。
軽く会釈をする程度で特に何も話したりはしなかった。
しばらく飲んだり歌ったりして、Tさんとママさんと和気あいあいと楽しい時間を過ごしてたら、いつの間にかおばあちゃまとおじさまも輪に入って談笑してた。
その時におばあちゃまの年齢が90歳だと発覚してビックリした。
元気すぎるやん…。笑
なんかウマが合ったのか、気がつけばその場にいる全員で笑いながら話をして盛り上がってた。
おばあちゃまもおじさまも最初は様子をうかがってて、少しずつ歩み寄ってくれた感じがして心地良い空間だった。
Tさんの人柄の良さがうかがえるステキな時間だった。
お互いにどこの誰かも名前も知らない。
でもそんなこと関係なくその時の空気感とか雰囲気だけで話するかどうかが決まってた感じがする。
Tさんが連れてきた人間なら大丈夫だと思ってくれたのもあるだろうし、僕とTさんとママさんが話してるのをみて決めたってのもあると思うけど、いつの間にか受け入れてくれてた。
ママさんにとってはお客さんだけど、おばあちゃまとおじさまにとっては何の利害もない。
お互いに話しても話さなくても何のメリットもデメリットもない関係だった。
でももっと話をしてみたい、って思えた。
そしてたぶん向こうもそう思ってくれたんだろうな、と。
僕がそう思ったのは、おばあちゃまもおじさまも、決して驕らなかったからだ。
新参者の僕をただひとりの人間としてみて受け入れてくれた。
人生の先輩ではあるけど、ただただ先にこの世に生を受けただけ。
何かをひけらかすわけでもなく、自分たちはただ歌が好きなババアですよ、と言わんばかりにこっちが申し訳なくなるぐらいずっと低姿勢でいてくれた。
あー。
歳を重ねてもこんな人間でありたいなー、と思った。
ご清聴ありがとうございました。
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