おはようございます。
こども食堂【虎吉】店主・高木のひとりごとです。
本日のテーマは『もののけ姫はこうして生まれた』。
かれこれ30年ぐらい前のジブリ映画。
当時の日本記録とか観客動員数を更新して社会現象にもなった超大作。
そんなもののけ姫の制作過程を記録した「もののけ姫はこうして生まれた」というドキュメンタリーがある。
個人的にはもののけ姫本編よりも何百倍も楽しくて何回みたかわからないぐらいみてる。
たった3秒しかないワンシーンを作るのに3ヶ月もかけたりするし、作画、アフレコ、色指定、音楽などなど細かいところを指示したり、その指示がまためちゃくちゃ面白い。こだわり具合がハンパなくて指示を出された方はいつも「まじすか・・・」みたいな顔して困惑気味。
中でもアフレコ現場は圧巻。
もののけ姫の声優陣の皆さまはすごく豪華な顔ぶれなので、アフレコの巻はいちばんみた回数が多い。
ちなみにDVDで3つに分かれてて、合計すると7時間ぐらい。
アフレコで面白いのは宮崎駿監督が現場でどんどんイメージを膨らましてアイデアをポンポン出してるところ。
特にモロと乙事主の関係性のとこなんかは何回みてもニヤニヤしちゃう。
美輪明宏さんと音響監督さんの何気ない会話を聞いた宮崎駿監督はモロと乙事主が昔いい仲だったっていう設定を思いついてニヤニヤしてる。
そしてその指示をもらった美輪さんの声が全然別モノになるのはもう鳥肌モノ。
男でも女でもない神様の声を瞬時に見事に演じてみせた。
この人がジブリの次々回作「ハウルの動く城」で荒れ地の魔女も演じてるとは到底思えないぐらい演技の幅が広い。笑
他にもジコ坊役の小林薫さんがアフレコしてる時に手を伸ばしてお椀を取るシーンの時に、声だけだと不自然じゃないですか?と小林さん。
そこに気づかなかった宮崎駿監督はそれを指摘されてめっちゃ嬉しそう。
とか。
他にも印象的だったのは、アシタカ演じる松田洋治さんがタタラ場の女性たちが働く現場に行って放ったひと言。
「そうか」
自分が呪いを受けた元凶はこのタタラ場を取り仕切ってるエボシ。
でもここの女性たちはそのエボシに救われて、このタタラ場がないと生きていけない。
その二面性に直面して、放たれるたった3文字の言葉に意味を持たせるために何回も録り直し。
すげーとこにこだわるなーと。
3文字と言えばもののけ姫のキャッチコピー。
生きろ。
糸井重里さんが作ったこのたった3文字のキャッチコピーも、プロデューサーの鈴木敏夫さんと50回以上ファックスでやり取りしてやっと決まったもの。
ジブリの映画のキャッチコピーはだいたい糸井重里さんが担当していて、いつもすんなり決まっていたそうなのだけど、もののけ姫だけはなかなか決まらず、苦しかったとのこと。
とかなんとか、他にも書きたいことたくさんありすぎて日が暮れそう。
そしてひとつひとつが内容が濃すぎて引きこもりオタクの僕にとっては脳汁が出まくって大変。
でも、このドキュメンタリーをみたことが僕のその後の創作活動に大きく影響を与えてくれたことは間違いない。
これをみたのは20歳ぐらいの時で、本気でバンドをやり出したぐらいの時。
映画と音楽だと全然関係ないようにみえるけど、根っこは同じ芸術だってことを、このもののけ姫はこうして生まれたは教えてくれた。
結局は人の心を動かす作品を作るために必要なものは熱量なんだな、と。
宮崎駿監督が言ってた言葉で衝撃だったのが、
生活全部がその作品に吸い尽くされてしまうぐらいの覚悟を持ってやらないといい作品は完成しない。
たしかに、宮崎駿監督は朝から夜中までずーっと作品作りに没頭してる。
監督だから絵を描くこと以外にも、アフレコ現場に行ったり、音楽作りの現場に行ったり、他にもたくさんやることはあるけど、他の現場でももののけ姫の絵コンテを考えたりしてる。
寝る以外はずっともののけ姫って感じだ。
ドキュメンタリーだからそんなふうに編集してるってのもあるんだろうけど。
そんなことはどうでもいい。
これをみた当時は衝撃だったけど、ひとつの作品を作るのにそれだけの熱量を込めないと完成しないっていうのは今ならよくわかる。
形だけの完成じゃなく。
ちゃんと中身のある、タフな作品に仕上げるのは容易なことじゃない。
しかもひとりで作るんじゃなく、たくさんの人間が関わって作るならなおさら。
何人、何十人ものスタッフに自分の頭の中を共有するのはかなり手間のかかる作業。
それも2時間超の映画で。
自分で絵を描いたり。
他のスタッフが描いた絵をみて場合によっては直したり。
色の指定をしたり。
動画をチェックしたり。
アフレコをみたり。
音楽をチェックしたり。
やること盛りだくさん。
全体の流れを把握しないといけないし、その上で細かいところもみないといけない。
もちろんお正月やお盆休みなんかないに等しい。
生活全部がもののけ姫に支配されてる。
まさに命を削って作品を完成させようとしてる。
ここまでしないと作品は完成しないのか?
そんなことは誰にもわからない。
でもいちばん根っこにあるのは映画をみた人の心を圧倒的に揺さぶりたいっていう想い。
そのために、やれるだけのことはやっておきたい。
もっとこうしとけばよかったと後悔はしたくない。
その強烈な想いが身体を勝手に動かすんだろうな、と。
その想い、熱意が作品を通じて、宮崎駿監督の人柄を通じていろんな人に伝染してスタッフ、声優、もののけ姫に携わる人たち全員が同じような熱量になった。
そりゃ何回みても飽きないわ。
こんなにも、いろんな人を巻き込んでしまう作品を作りたい。
人生のどっかで映画を1本作ってみたいな。
まだ何にもみえてないけど。
この「もののけ姫はこうして生まれた」はクリエイティブなことをしてる人、しようとしてる人は全員みた方がいい。
この頃のジブリはすでに日本人なら誰もが知ってるアニメ制作スタジオ。
そんな人たちがこんなにも泥臭く地べたをはいずり回ってひとつの作品づくりに命を削って挑んでる。
一流ってこういうことか、と。
20代の時にみた時もだいぶ魂に刻み込まれたけど、今改めてみるとさらに凄みを増してるというか、同じドキュメンタリーのはずなんだけど別モノをみてるような感覚に陥った。
てことはそれだけ感覚がクリアになったってことだな、と。
余計なしがらみが取れて、ヒイ様のセリフじゃないけど、「曇りなき眼で物事を見つめる」ことがやっとできた気がする。
まだ全部取れきってないのかもしれないけど。
作品づくりがより面白くなりそ。
ご清聴ありがとうございました。
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